

みなさんは、フォニックスの基礎知識もあるし音声言語もよく理解しているにも関わらずまとまった文を読むのに苦労している生徒を見て、思わず同情の念を持ったことはありませんか。EFL(英語を外国語として学ぶ)環境にある子どもたちにとって、読みの流暢さ(リーディング・フルーエンシー)を身につけるのはたやすいことではありません。そこで、「読みの流暢さ」とは何か、なぜそれが言語学習者にとって大切なのか、フルーエンシー指導にはどのような素材を使えばよいか、そしてどのようにして私たちの生徒の読みの流暢さを育んでいけばよいのかを考察したいと思います。
1. 読みの流暢さとは
「流暢さには3つの構成要素があります。流暢な読みには(1)適切な韻律、抑揚とともに起こる(2)正確で(3)自動的な単語認識が関わっているのです。」 (McKeena & Stahl, 2003, p.72, 番号は筆者による挿入) また、低学年における流暢さには、すばやく正確に文字の名前と音、単語、文を認識する能力も含まれます。子どもの流暢さは、その子になじみのある読み物をひとりで音読させてみることで簡易に測ることが出来ます。もし、読み方がゆっくりで細切れであれば、この生徒にはしっかりとしたリーディング・フルーエンシー指導が必要ということになります。
2. なぜフルーエンシー指導が必要か
テキストを読む行為の本質は、メッセージを理解し、「知識を広める」「メッセージの送り手とコミュニケーションをはかる」などの多様で個人的な目的を果たすことにあります。しかし、ゆっくりとテキストを読んでいると「単語を読み解く作業によって記憶が妨げられ、メッセージを理解することができません。」 (Linan-Thompson & Vaughn, 2007, p.59)フルーエンシー指導の目的は、読みの正確さとスピードを改善してたやすくメッセージを読めるようにすることによって、理解のために必要な認知スペースを確保させることだということを心に留めておきましょう。
3. どのような教材を使うべきか
読みの流暢さを向上させるもっとも有効な方法は、明確な指導のもと、生徒に同じテキストを何度も音読させることです。 (Linan-Thompson & Vaughn, 2007)そのような指導のためにはどのような素材を選べばよいでしょうか。
まず、テキストは生徒の「自立した読みのレベル」(independent reading level)、つまり一人で95%以上の正確さをもって読むことができるレベルでなければなりません。そのようなテキストであれば、子どもたちはかなりの成功率でテキストの意味を汲み取りながら読みの練習をすることが出来ます。ESL(English as Second Language)用の素材は、語彙力の限られている日本の若年学習者にとって適切ではない可能性があるということを覚えておきましょう。
テキストの文脈も、指導効果に大きな影響を与えます。内容が生徒にとっておもしろくない、実生活に基づく知識を越えている、または幼過ぎるために、繰り返し読む練習をする意欲を削いでしまうことが多々あります。生徒の興味、知識、成長度合いは、読みの教材を選ぶうえでの大きな指標となります。
そして、子どもたちが色々なタイプの談話(テキストタイプ)に触れられるように、英語学習者向け読み物(物語、フィクションなど)、簡単なネイティブ用絵本、コースブック内のストーリー、歌の歌詞など、多様な素材を使うようにしましょう。
4. リーディング・フルーエンシーを向上させる手法とは
子どもたちのリーディング・フルーエンシーを向上させる最も有効な方法は、適切な指導のもと、同じテキストを何度も音読させることだと多くの研究が示唆しています。子どもたちは集中力も低く、メタ認知(自身の学習を客観的に見つめる力)も未発達ですから、これは意外と難しいと言えるでしょう。私たちの指導環境におけるリーディング・フルーエンシー指導の成功の鍵は、意味深く楽しいアクティビティを適切なサポートを与えながら行うことにあります。ここに日本の子どもたちへの指導に役立つ活動例をいくつか紹介しましょう。
ビッグ・ブックの読み返し
幼いときに指導者に読んでもらったビッグ・ブックに再度触れ、自分自身で音読できるようになったと実感すれば、それは子どもたちにとって大きな自信となります。生徒自身の音声記憶や本のイラストが、テキストを認識する手助けをしてくれることでしょう。この活動では、まず指導者が子どもになじみのあるお話を読み聞かせます。そして、指導者の言葉によるサポートのもと、子どもたちは「一斉音読」を数回繰り返します。この間、指導者は少しずつサポートを減らしていき、子どもたちだけで音読できるところまで導きます。一斉音読では、ついていくのが大変な生徒もいるかもしれませんが、そのような生徒は自分なりに音読に参加することができますし、適切な速度やイントネーションの音読を聴く経験をつむことが出来ます。最後に、数人の子どもたちに一番好きな場面を選ばせてそのページをクラスの前で音読させても良いでしょう。
リーダーズ・シアター
この活動では、はっきりとした話の展開があり会話が主体となったテキストを適切な抑揚や声色で流暢に読めるようになるまで音読練習します。このような活動に適した最も入手しやすいテキスト素材は、コースブックに含まれているストーリーでしょう。まず、音声CDをかけるか「読みの演技」のお手本を示し、子どもに正しい韻律の読みに触れさせます。そして、テキストを指でなぞりながら、上のアクティビティと同じように「一斉音読」を練習します。さらに、ペアで協力しながら音読の練習をする「パートナー・リーディング」に取り組みます。子どもたち自身にだれがどの箇所を読むか決めさせましょう。この練習の間に、指導者は個々の生徒に必要なサポートを与え、ひとりひとりの読む力を評価します。最後に、ペアごとにクラスの前に出て「読みの演技」をします。みんなの前でパフォーマンスするという期待が、子どもたちにテキストを何度も読みフルーエンシーの練習をする意欲を後押しします。
歌やチャンツの活用
親しみのある歌やチャンツを使ってのフルーエンシー練習は、特に、聴覚にすぐれた子どもたちにテキストを何度も読む動機付けをするのに有効です。大きな文字と適切なフォントで印刷された歌詞を子どもたちに配り、子どもたちにどの曲の歌詞か思い出すよう促しましょう。そして、その曲の録音を聞かせて曲調、内容を思い出させ、単語を指でなぞりながら、一斉音読の練習をします。最後に、歌、チャンツのCDをかけて、指なぞりをしながら合唱します。
5. 最後に
最後になりましたが、子どもたちのフルーエンシー指導では、幅広いテキストの流暢で表現力豊かな読みきかせも大きな役割を果たします。年齢にふさわしいお話の読み聞かせを日々の指導に取り入れましょう。この活動は子どもたちがフォニックスの基礎を学び始まる前であってもはじめることが出来ます。読み聞かせを通して、子どもたちは流暢な読みがどのようなものであるか知るだけではなく、テキストへの興味をふくらませ、一般知識や語彙を広め、文学に対する親しみを感じるようになるでしょう。そして、これらはすべてリーディング・フルーエンシー活動に積極的に関わる動機付けとなるのです。
この記事が皆さんの指導の役に立てばうれしく思います。指導仲間や子どもたちといっしょに、リーディング・フルーエンシー指導の新しい手法を探っていきましょう!
参考文献
McKeena, M.C. & Stahl, S.A. (2003). Assessment for Reading Instruction. New York: Guilford Press.
Lenters, K. (2004) No Half-Measures: Reading Instruction for Young Second-Language Learners. The Reading Teacher. 58(4). 328-336
Linan-Thompson, S. & Vaughn. S. (2007). Research-Based Methods of Reading Instruction for English Language Learners Grades K-4. VA. Association for Supervision and Curriculum Development.
National Institute of Child Health and Human Development. (2000) Teaching Children to Read: An Evidence-Based Assessment of the Scientific Research Literature on Reading and Its Implications for Reading Instruction. Excerpted in What Works in Fluency Instruction on www.readingrockets.org/article/72
Texas Education Agency (2002) Guidelines for Examining Phonics and Word Recognition Programs. Excerpted in Fluency: Instructional Guidelines and Student Activities on www.readingrockets.org/article/3416
中村 麻里
English Land 共著者。金沢市にて英会話教室 English Square を主宰するかたわら、全国各地でのティーチャー・トレーニング、教材開発に従事。JALTニュースレター、『子ども英語』(アルク)など執筆記事も多数。英国アストン大学TEYL修士課程修了。ETJ石川支部長。