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アカデミックアーティクル

■田縁眞弓 効果的なティームティーチングとは?

  • キッズE-リンク アーカイブ
  • at 2010/2/08

1. はじめに

2011年より公立小学校において英語活動が完全実施されることに向けて、2人あるいは3人の先生が教壇に立つといったような場面を多く目にするようになってきました。民間の英会話教室においても日本人指導者がネイティブの先生をゲストティーチャーに招いたり、反対にネイティブの先生が日本人に補助に入っていただくこともあるでしょう。そういった時、従来、語学指導の場で考えられる生徒の母語への「通訳者」といった役割(日本人)、あるいはいわゆる人間CDプレーヤーの役割(ネイティブ)、または机間巡視による手助けやクラスルームマネージメント以外に、複数指導者のメリットを最大限に生かす方法は何があるでしょうか?子どもたちにとって理解可能な英語のインプット(Krashen, 1985)を増やすには、どんな方略が考えられるでしょうか?私立小学校においてティームティーチングの実践を重ねてきた立場から、どういった形で2人の教師が授業に関われば有効であるのかあるかを考えてみました。

2. Teacher Talk Adjustment:教師の発話調整

英語が母語であるからといって、すぐに英語の先生ができるかというとそうではない、ということはすでにみなさん周知の事実です。例えば、まったく英語指導経験のないネイティブの人に普通のスピードで教室で子どもたちに話をしてもらったら(もちろん英語教室などの生徒のレベルが高い場合は除いて)子どもたちは困惑してしまうことでしょう。でも、その外国人の人が例えば、写真を用いたり、黒板に絵を描いたり、ゆっくり明瞭に話したり、また時々会話を止めながら子どもたちの反応を見てくれたりしたらどうでしょう。ずいぶん子どもたちの理解も変わってくると思いませんか?こういったテクニックが、英語のみで指導が行われる教室では生徒の理解を上げるためにも必要とされます。これを英語ではTeacher Talk Adjustment (Chaudron, 1988) と呼んでいます。そして、語学を教える先生にはとても必要な技術でもあります。ではこれを、ティームティーチングの観点からみた場合どういった応用が可能となるのでしょうか

3. Teacher Talk Adjustment (TTA):ティームティーチングにおけるティーチャートーク

本校の英語の授業はすべて2006年の開校以来ネイティブ教員と日本人教員のティームティーチングで行われています。今回、どのようなスタイルが一番英語指導に有効か共通理解のツールとするために、また新人教員の研修のツールともなるようにTTAのリストを作成しました。まずベテラン教員のティームティーチング(計6名)の3つの授業をビデオ撮りしたあと、それらの発話を注意深く書き起こしたものを分析した結果、表記のような2つのリストができました。そのリストより明らかになったことは、2人の教員が教室にいるという最大のメリットは、机間巡視や個々の生徒の手厚い指導、また授業が円滑に進められるように、一人の先生が教えている間に、別の一人が次の活動のために教具(CDやカードなど)を準備する、といったこと以外に、何よりも2人の会話のやり取りを見て、聞かせることにあるということです。どちらかの教員が、生徒の理解が足りないと思ったときに生徒に向かって "Do you understand?" などと聞くのではなく(もちろんその場で日本語に訳すのでもなく)すかさず英語で話している別の先生に対して "Excuse me, what is __________?" と聞いてみたり、"Please say it again." などといって繰り返しを要求します。または、時には、相手の英語をもう一度繰り返したり、やさしい英語に置き換えて生徒に聞かせることもあります。すなわち、一人の先生が、生徒の立場に立って生徒になり代わり発話を行う、ということなのです。この実践のおかげで、入学当初は日本人教員に向かって「日本語で訳して」と言っていた子どもたちも、いつもこういった先生の手助けがあることに安心して英語のみの授業も聞き続けることができるようになりました。これは子供たちの英語リスニング力を上げるだけではなく、英語だけでもわかるという大きな自信につながるようです。ここにひとつ、そういったTTAのサンプルをあげてみます。これは実際に行われた5年生の授業をビデオから書き起こしたものです。

JT What time did you come to school today?
NT Today I came early. I came to school 7:15.
JT 7:15? One five? Hmm that's early. So how do you... how do you come to school?
NT I come to school by subway.
JT By subway? Subway?
NT
 Yes, I take subway.
JT Subway is what? Train?
NT
 Train but JR train Hankyu train No. Underground (with gesture) is subway.
JT Ah, underground is subway.
S Chikatetsu?

このリストを作成する過程でもうひとつ気がついた私たちのティームティーチングの特徴は、2人の教員がまるで舞台に立って「ぼけ」と「突っ込み」を行う演者のような役割を果たしていることです。子どもたちは、先生2人の会話を一生懸命内容を推測しながら聴き続けます。そのうち、質問が生徒に向かって発せられることも多々ありますが、一人の先生が、わざと間違った答えを生徒のふりをして言ってみたり、事実を違うことを発言したりするのが、生徒たちが発話する最大のきっかけとなります。このことによって、子供たちは自ら積極的に英語を話し始める場面が多々見られました。次に挙げる例は、1年生のクラスで、NTが「オーストリッチは泳ぐ動物だ」と発話したことに対して、子供たちが瞬時に反応している場面です。発話自体は、とても幼いものですが子どもたちがとても積極的に授業に取り組んでいる様子がよく分かる一場面でした。

JT Ostriches don't swim.
NT They are good at swimming.
Ss
 No no no.
JT No way.

教室における指導の「いい流れ」は、生徒や先生が一緒に楽しみながら学びを深めてこそ可能になるものでしょう。生徒たちを巻き込んで、テンポのある楽しい授業をたくさんの英語を聞かせながら行うといった意味において、ティームティーチングはその可能性をいっぱいに秘めたとても有効な手段となりえます。チャンスがあれば、ぜひ上記にあげたわれわれの実践をクラスで一度お試しになることをご提案したいと思います。

 

参考文献
Chaudron, C. (1988). Second language classroom: Researching on teaching and learning. Cambridge, UK: Cambridge University Press.
Krashen, S.D. (1985). The input hypothesis: issue and implications. Laredo Publishing Company, Inc. CA.

 

田縁 眞弓

立命館小学校英語科アドバイザー。教育コンサルタント、また講師トレーナーとして大学および教育委員会で小学校英語活動の教師育成および指導に取り組む。Boost! シリーズエディター。