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アカデミックアーティクル

■山中純子 The Power of Extensive Reading

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  • at 2009/7/07

昨今、英語多読が徐々に熱をおびてきています。言語を習得するにあたって、多読が容易かつ効果的な方法であることが見出されてきているのでしょう。“多読は、生徒自身がレベル的に易しくて面白そうな内容の本を自分で選び、たくさん読むことである”(Day, 2007)たったこれだけのことですが、その効果は顕著なものです。“結果はえてして読み方を学ぶ以上のものとなり、多読は生徒の総括的な語学力、英語に対する前向きな学習意欲を促し、さらには学習そのものに対する動機づけともなる”とDay(2007)は述べています。Krashen(2003)は、多読は“(学習に対する)不安を最小限に抑えつつ理解可能なインプットを与えることができる方法”として提案しています。

クラッシェンが述べていることは、子どもに英語を教えている先生方なら一度ならず耳にしたことがある考え方でしょう。子どもたちが抱えている、異言語に対する“不安を最小限に抑え”つつ“理解可能なインプット”を与える、というのは、私たちが日々教室で行っていることにほかならないからです。事実、先生方こそが良い読み手 ―様々な本を読み、独立した、そして常に学び続ける姿勢を持った読み手であり学習者― を育てる鍵を握っている、と私は考えています。

そのためにはまず、先生方自身が子どもたちに対して様々な本を読んであげることをお勧めします。教室に良質な絵本やリーダーを準備し、できるだけ頻繁に本を読み聞かせてあげるのです。そういった本は、子どもたちがいつでも手に取れる環境に置いておくようにしたいものです。そうすることでいつか子どもたちは自分だけの“ホームラン・ブック”に出会うことでしょう。“Trelease(2001)では、たとえ1冊であっても肯定的な読書体験、たった1冊の‘ホームラン・ブック’が新たな読み手を作り出す、と述べられている”(Krashen, 2004)

子ども個人に限らず、クラスの“ホームラン・ブック”があるかもしれませんね。そういった本は魅力的なので、読み進めるうちに子どもたちはすっかりその世界に浸りきってしまいます。ストーリーに引き込まれれば引き込まれるほど、子どもたちにとって言葉が 「無意識」になります。これが「習得」につながり得る瞬間です。そしてまた、子どもたちがその本を好きだからこそ何度でも読んで欲しいとせがむようになるのです。こうして子どもたち自身による自然なアウトプットが導かれるのです。

子どもたちが本に対して肯定的な感情を持つこと、それこそが Joyful Readers であることの基本なのです。こうなればしめたもの。子どもたちが本を“とにかく楽しめて喜びを見出すことができる対象”(Simensen, 1987)と認識することが大切なのです。中高生にもなると“読書を‘学校の勉強’のひとつ”(Bondy, 1990)か、そうでなければ‘真剣に本腰を入れて取り組まなければこなせない難しい課題’(Elly, 1992)と見なす傾向にあります”(Day & Bamford, 1998)。従って、幼少期に読書の楽しさを経験することが、また願わくば彼ら自身の“ホームラン・ブック”と出会うことがとても重要になるわけです。もしそうした機会を子どもたちに与えられるのであれば、子どもたちの学ぶ力に大きな力添えをしてあげられることでしょう。

 

参考文献
Day, R. R. (2007). Putting Extensive Reading to Work, JALT Conference Featured Speaker Workshop.
Krashen, S. D. (2004). The Power of Reading, Portsmouth: Heinemann.
Krashen, S. D. (2003). Exploration in Language Acquisition and Use, Portsmouth: Heinemann.
Day, R. R,, & Bamford, J. (1998). Extensive Reading, Cambridge: Cambridge University Press.
Halliwell, S. (1992). Teaching English in the Primary Classroom, Harlow: Longman.
Scott, W. A., & Ytreberg, L. H. (1990). Teaching English to Children, New York: Longman.
Ellis, R. (1997). Second Language Acquisition, Oxford: OUP.

 

山中 純子
Impact Issues 共著者。Extensive Reading Foundation 理事。河合塾学園トライデント外国語専門学校アカデミックアドバイザー、キッズイングリッシュ主任。JALT PANSIG 2008 の基調講演、Pearson Longman Kids Tour 2009、教員や学生対象の多読セミナーなど、講演活動も幅広く行っている。