フロー(流れ)、とは、どの授業でも目に見えない影響力を持っています。ある授業はとてもスムーズに進行するのに、他のある授業では全く正反対だったりするものです。良い授業と悪い授業には、原因となる様々な要素がありますが、授業のフローはその中でも大きな影響を与えるものです。
フロー = バランス + 前後のつながり(トランジション)
フロー、とここで私が指しているのは、教室における活動のバランスと、その活動間における前後のつながりの結果のことです。よいバランスとは、その活動が質的にも量的にも、期待した形で生徒が関与して達成されるものです。ひとつの活動から次の活動へのスムーズな移行は、授業の組織化、教材の適切な配置、教師の心の準備などが整って初めて成し遂げられるものです。
バランスのよいフローは、以下の図のように表現することができます。
このフローからは、活動間のスムーズな移行を含んだバランスのよい授業を想像することができます。授業は、"Hello Song" を歌いながら子どもたちを教師のまわりに静かに座らせる(①)ところから始まります。教師は次にフラッシュカードを使って単語の復習をし、次の活動、カルタ取りゲーム(②)へと移行していきます。ゲームが終わったら、子どもたちに全てのカードを教師に戻すよう指示し、次のストーリータイム(③)へのスムーズな移行を促します。ストーリータイムは、次に行う動作を含んだ活動(TPR、④)へとつながる歌でしめくくります。そして次にはワークブック(⑤)、授業の終わりには子どもたちがステッカーをもらえるゲーム(⑥)を行い、最後に再び子どもたちを教師のまわりに座らせて "Goodbye Song" を歌い(⑦)、授業を終えます。
波形のフローを描くような授業であれば、子どもたちは静と動、にぎやかさと静かさのくり返しを授業で体験していることになります。子どもたちの誰もが、同じ活動を好むとは限りません。バランスよく様々な活動を授業に盛り込むことは、集中力の続かない子どもを引きつけるだけでなく、子どもたち全員に対して皆それぞれ違った好みがある、ということを示すことにもつながります。
私が関わっている養成講座の受講生には、レッスンプランニングの段階でフローを描いてもらうようにしています。そして、評価の段階でフローと実際の授業とを比較、考察するのです。受講生の授業を見学したところ、以下A~Cのようなパターンが見られました。もし授業を見学していたのがあなただったとしたら、どのような授業を見たか想像できるでしょうか?続きを読む前に、少し考えてみてください。
A... 線の位置が低く、平坦であるのが分かります。つまり子どもたちは体を使った活動をしておらず、ひとつもしくはふたつの似たような活動しか行われていません。一部の子どもたちはこういった授業でも楽しめると思いますが、多くの子どもたちにとっては授業に集中することの方が大変でしょう。つまり、子どもたちのやる気をそいでしまい学習結果にも支障をきたすことになりかねないのです。
提案: もう少し、子どもたちが体を動かして取り組めるような活動を取り入れましょう。
B... 線の位置が高く、平坦ですね。子どもたちは体を思う存分使っている反面、静かな時間というのがほとんどありません。このようなタイプの授業がうまくいくこともありますが、授業中子どもたちが過度に興奮してしまう可能性もあります。ちょっとしたくだらないことが教室運営に支障をきたす引き金になることもあるでしょう。そして間違いなく、この授業が終わったあとの先生は疲れきってぐったりです。
提案: 静かに取り組める活動をいくつか選んで取り入れてみましょう。活動における静と動のバランスを、子どもたちと一緒に楽しむのです。
C... なんともまとまりのない授業 ―ジグザグの線から見てとれますね― になってしまいました。授業には様々な活動が取り入れられていますが、活動の数が多すぎて前後のつながりがスムーズではありません。これでは子どもたちも集中できず授業のフローを台無しにしてしまいます。子どもたちの中には、前後のつながりのなさに疑問を抱く子すらみられるかもしれません。
提案: もう少し授業を視覚的に捉えてみましょう。授業前にCDを使うトラックに合わせておく、教材を教室内のどこに置くか、またどこに置くのが自分にとって授業を進める上で便利なのか、などをよく考えてみましょう。
私の受講生にとってフローの図は、彼ら自身が授業「全体」をより視覚的に捉えるのに一役買っているようです。授業はそれぞれに関連性のない活動の連続体ではありません。自分自身の授業やクラスに合わせて様々なフローをデザインし、あとはその流れにのって授業を進めましょう!
--------------------------------------------------------------------------------
この記事は、2009年3月8日(日)に行われたピアソン・ロングマン キッズツアー(仙台)での、
ジョン・ウィルトシアによるプレゼンテーションの内容を要約したものです。
--------------------------------------------------------------------------------
参考図書
ここで述べている「フロー」に関連した内容のものは少ないのですが、以下に記すものは授業のフローをよりよいものにするヒントを与えてくれるかもしれません。
Read, C. (2007). 500 activities for the primary classroom. Oxford: Macmillan Education. pp.12 -routines
Slattery, M., & Willis, J. (2001). English for Primary Teachers. Oxford: OUP. pp.14-17 –starting and ending lessons (日本語版もあります)
Linse, C. T. (2006). Young Learners. New York: McGraw Hill. pp.190 -an example of a balanced class
Halliwell, S. (1992). Teaching English in the Primary School. Harlow: Longman. pp. 27-35 -about keeping the lesson simple
Krause, A., & Cossu, G. (2005). SuperKids Teacher's Guide (英語版・日本語版). Hong Kong: Longman.
Krause, A., & Nagashima, M. (2001). SuperTots Teacher's Guide (英語版・日本語版). Hong Kong: Longman.
Paul, D. (2003). Teaching English to Children in Asia. Hong Kong: Longman. -chapter 3 lesson planning, routines and core activities
ジョン・ウィルトシア
宮城大学准教授。来日前は英国にて6年間初等教育に携わった経験も持つ。国内をはじめ、アジア、欧米各地でも精力的に活動しており、PANSIG2007では基調講演を、またJALT2007およびMICELT2008(マレーシア)などでも講演を行っている。