

児童英語の世界では教師自身のティーチャートークが教室内のインプットの大部分を占めています。そして、英語で授業を行う場合、どの教師も子どもにとってわかりやすい英語を話そうと努力しているはずです。しかし、 子どもにとってのわかりやすい英語、"comprehensible input" (理解可能なインプット)の中身については、教師の主観や経験などにより解釈が異なります。積極的なアウトプットをうながすため教師自身はあまり話さないほうがいい、と思っている先生もいるかもしれません。研修などで「どんなティーチャートークを心がけていますか」とたずねると、多く返ってくる答えが「なるべく簡単な英語で話す」です。ですが、「簡単なインプット」イコール「理解可能なインプット」、とは限りません。また、先生が自分の英語に自信がなかったり、「こんなことを英語で言ってもきっとわからないだろう」という気持ちでいるとつい日本語を多く使ってしまいがちです。また、オールイングリッシュで授業をしています!という場合でも、いわゆるクラスルームイングリッシュ(Classroom English、英語のみで授業を進めるのに役立つ英語表現)の枠を超えた、教師と子どもの意味あるインタラクションを目指すティーチャートークについてふりかえることはとても大事な作業です。ここでは、理解可能なインプットのために教師がどんな努力をしているか、小学校で英語を教える日本人教師のティーチャートーク分析、教師研修で関わった先生方の反応、また私自身のティーチャートークをふりかえりながらまとめてみたいと思います。
まだ英語で授業をすることに慣れていない先生は、英語でどんなことを話すかノートに書き出したり、参考となるトークを真似して練習したり、事前に準備されることが多いかと思います。それは英語で授業をするスキルと自信を身につける上でとても大事なステップです。そして少し慣れてくると、だんだんと子どもたちとのインタラクションを楽しみ、話しかけ方や問いかけ方を変えたり、子どもたちの発話そのものに耳をかたむける余裕もでてきます。授業中の教師と生徒のやりとりに関する文献では、前もって分かりやすくしたティーチャートークよりも、実際に子どもとのやりとりを通してティーチャートークを調整していくほうが子どもにとって理解しやすい、という研究結果が出ています。また私自身の修士課程プロジェクトでの分析では、ティーチャー『トーク』とは言え、言語的な要素と非言語的な要素の両方が大事であることがわかりました。つまり子どもたちが理解するには、子どもたちが分かったことや分からないことなどについて自由に表現できる時間・空間を創り出すことが大事で、それにはティーチャートークの中身だけでなく、「どう話すか」という教師の態度やどういった気持ちで話すのかに左右される、ということです。以下にあげるリストで、先生方ご自身のティーチャートークを分析してみてはいかがでしょうか。自分が普段から心がけていること、逆にこれから心がけたいと思う項目があればチェックしてください。
Linguistic efforts and strategies
ティーチャートークを理解可能なものにする工夫
Extra-linguistic efforts
ティーチャートークを理解可能なものにする、言語によらない要素
子どもたちと教師との意味あるインタラクションはどうしたら起こるのでしょうか。教師が自らのティーチャートークを分析し、みつめ直すことができるよう、様々な実例(教師と生徒のやりとりを書き出したもの)、また、自分の授業の一部をテープやビデオに記録して分析するのも有効です。その際大事なのは、良いティーチャートーク、悪いティーチャートーク、と2分類するのではなく、上記にあげたティーチャートークの例を参考にして、自分が子どもたちとどんなインタラクションをしているかを書き出してみることです。例えば、自分はよく質問をしているか、そしてそれらの質問はどういう類いのものか、質問の後に子どもが答えるための十分な時間を与えているか、それとも待ちきれず自分で答えを言ってしまうのか、などを書き出します。そして、改善したい点は何か、子どもたちに英語で話す際に大事なことは何かを考えます。子どもたちに理解できるティーチャートークは、その作業のくり返しから生まれるのです。教室内でのインタラクションの研究を深めるには、「教師自身の経験や信条を見つめ直すことが必要」と森(2003)では述べられています。私自身、教師よりも「子どもが話す」のが大事、そして「英会話のダイアローグを覚えてほしい」という気持ちから決まったダイアローグばかり話し、OK! Good! Next! などと、単語で細切れに話していた時期もあります。逆にティーチャートークが大事だから、と、ただぺらぺらと話していた時期もあります。理解可能で、かつ意味のあるインプットを与え続けることが、言語の習得につながると言われています。また、Rost (2002) では、学習者にとって意味のあるインプットの中身は変化するものだと述べられています。子どもたちにとって意味のあること、子どもたちの表情や発話をキャッチし、子どもたちの理解度を把握し、探り、よりわかる喜びを与えられるティーチャートークを通して子どもと関われるよう努力し続けていきたいものです。
References
Cadorath, J & Harris, S. (1998). Unplanned classroom language and teacher training. ELT Journal, 52, 188-196
Cervantes, R. & Gainer, G. (1992). The effects of syntactic simplification and repetition on listening comprehension. TESOL Quarterly, 24, 767-770.
Garton, S. (2002). Learner initiative in the language classroom. ELT Journal, 56, 47 - 56.
Lynch, A.J. (1988). Speaking up or talking down: Foreign learners' reactions to teacher talk. ELT Journal, 42, 109-116.
Mori, R. (2003). Respect for students: An alternative paradigm for classroom interaction research. FPU Journal of Nursing Research, 1, 3-13.
Rost, M. (2002). Teaching and research in listening. Harlow: Longman.
Slattery, M., & Willis, J. (2001). English for primary teachers: A handbook of activities and classroom language. Oxford: Oxford University Press
Supp Cabrera, M. P. & Martinez, P. B. (2001). The effects of repetition, comprehension checks, and gestures, on primary school children in an EFL situation. ELT Journal, 55, 181-188.
Takahashi, A (2005). A study of teacher talk and its modification in a Japanese elementary school classroom. Teachers College, Columbia University M.A. Project
Willis, J (2002). Teacher talk in the primary school. The Language Teacher
清野 明子
English Land共著者。小学校、中学校などで幅広く英語教育に携わった経験を持つ。現在は長野県松本市で自ら教室を主宰。