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アカデミックアーティクル

■清野 明子 ティーチャートークを見つめ直す

  • キッズE-リンク アーカイブ
  • at 2009/2/06

児童英語の世界では教師自身のティーチャートークが教室内のインプットの大部分を占めています。そして、英語で授業を行う場合、どの教師も子どもにとってわかりやすい英語を話そうと努力しているはずです。しかし、 子どもにとってのわかりやすい英語、"comprehensible input" (理解可能なインプット)の中身については、教師の主観や経験などにより解釈が異なります。積極的なアウトプットをうながすため教師自身はあまり話さないほうがいい、と思っている先生もいるかもしれません。研修などで「どんなティーチャートークを心がけていますか」とたずねると、多く返ってくる答えが「なるべく簡単な英語で話す」です。ですが、「簡単なインプット」イコール「理解可能なインプット」、とは限りません。また、先生が自分の英語に自信がなかったり、「こんなことを英語で言ってもきっとわからないだろう」という気持ちでいるとつい日本語を多く使ってしまいがちです。また、オールイングリッシュで授業をしています!という場合でも、いわゆるクラスルームイングリッシュ(Classroom English、英語のみで授業を進めるのに役立つ英語表現)の枠を超えた、教師と子どもの意味あるインタラクションを目指すティーチャートークについてふりかえることはとても大事な作業です。ここでは、理解可能なインプットのために教師がどんな努力をしているか、小学校で英語を教える日本人教師のティーチャートーク分析、教師研修で関わった先生方の反応、また私自身のティーチャートークをふりかえりながらまとめてみたいと思います。

まだ英語で授業をすることに慣れていない先生は、英語でどんなことを話すかノートに書き出したり、参考となるトークを真似して練習したり、事前に準備されることが多いかと思います。それは英語で授業をするスキルと自信を身につける上でとても大事なステップです。そして少し慣れてくると、だんだんと子どもたちとのインタラクションを楽しみ、話しかけ方や問いかけ方を変えたり、子どもたちの発話そのものに耳をかたむける余裕もでてきます。授業中の教師と生徒のやりとりに関する文献では、前もって分かりやすくしたティーチャートークよりも、実際に子どもとのやりとりを通してティーチャートークを調整していくほうが子どもにとって理解しやすい、という研究結果が出ています。また私自身の修士課程プロジェクトでの分析では、ティーチャー『トーク』とは言え、言語的な要素と非言語的な要素の両方が大事であることがわかりました。つまり子どもたちが理解するには、子どもたちが分かったことや分からないことなどについて自由に表現できる時間・空間を創り出すことが大事で、それにはティーチャートークの中身だけでなく、「どう話すか」という教師の態度やどういった気持ちで話すのかに左右される、ということです。以下にあげるリストで、先生方ご自身のティーチャートークを分析してみてはいかがでしょうか。自分が普段から心がけていること、逆にこれから心がけたいと思う項目があればチェックしてください。

Linguistic efforts and strategies
ティーチャートークを理解可能なものにする工夫

  1. Classroom English
    指示、注意、ほめ言葉など、授業の進行に役立つ英語表現を集めたもの
    特に英語を母語としない教師にとって役立つ(様々な参考図書に例文のリストがありますので、ここでは割愛します)
  2. Premodified input
    子どものレベルに合わせて事前にティーチャートークを調整する
  3. Interractionaly modified input
    子どもたちとのやりとりの中で随時ティーチャートークを調整する
  4. Elaborating/Contextualizing
    例を出したり、子どもたちがすでに知っていることと関連づけて理解できるようにする
    例 "grow" We all grow. A baby grows up to be a boy or a girl. A caterpillar grows into a  ? Yes. A butterfly!
  5. Recasting
    子どもが日本語で言ったことを英語にして全体に返す
    例 できるかどうか聞いてるのね!? Yes, if you CAN ski and you're good at skiing, please stand up! I CANNOT do judo, but if you CAN do judo. Please stand up!
  6. Rephrasing
    言い換える
    例 Famous? Umm... "Famous" means everyone knows that person, like..., you know, I know, she knows, he knows, we all know....
  7. Responding to learner talk: accepting, evaluating, rephrasing, extending
    まず子どもの発言を受け入いれ、評価し、言い換え、さらに発展させる
    例 Oh, you went to see a movie with your dad! Good job! You can say your name very well! I see. You want a game for your birthday, right? How about you? What do YOU want for your birthday? (asking the rest of the students)
  8. Verbal scaffolding
    子どもの「不完全な」発言や単語のみの発話を文法的に正しい表現や文にして返す
    例 Piano! Oh, you take piano lessons. What day do you take the piano lessons? Monday. Good! You take piano lessons on Monday.
  9. Asking questions
    Display questions (教師が答えをすでに知っている質問)
     例 What color is this?
    Referencial questions(教師自身も答えを知らない質問)
     例 What is your favorite thing to do?
  10. Asking learners for clarification/ confirmation
    子どもの言わんとしていることを確認する
    例 You mean you want a new game, but your mom says No?
  11. Eliciting
    話すのを少し止め、子どもたちの発話を引き出す
    例 Nanako's wearing.....? Yes. She's wearing a dress. A pink dress.
  12. Making mistakes deliberately
    わざと間違えたことを言い、子どもの注意、気づきをうながす
    例 It's very warm today. NO! It's very cold today!

Extra-linguistic efforts
ティーチャートークを理解可能なものにする、言語によらない要素

  1. Gesture/facial expressions
    ジェスチャー。表情 大げさなときもあってもいいが、子どもを見下さない明るい表情や態度
  2. Nonjudgmental attitudes
    良し悪しをつけずに子どもを受け容れる態度
  3. Positive attitudes and positive assumptions towards students learning
    子どもたちが自分の言っていることを理解できるはずだという信念
  4. Patient attitudes
    子どもが理解するまで忍耐強く待てる資質

子どもたちと教師との意味あるインタラクションはどうしたら起こるのでしょうか。教師が自らのティーチャートークを分析し、みつめ直すことができるよう、様々な実例(教師と生徒のやりとりを書き出したもの)、また、自分の授業の一部をテープやビデオに記録して分析するのも有効です。その際大事なのは、良いティーチャートーク、悪いティーチャートーク、と2分類するのではなく、上記にあげたティーチャートークの例を参考にして、自分が子どもたちとどんなインタラクションをしているかを書き出してみることです。例えば、自分はよく質問をしているか、そしてそれらの質問はどういう類いのものか、質問の後に子どもが答えるための十分な時間を与えているか、それとも待ちきれず自分で答えを言ってしまうのか、などを書き出します。そして、改善したい点は何か、子どもたちに英語で話す際に大事なことは何かを考えます。子どもたちに理解できるティーチャートークは、その作業のくり返しから生まれるのです。教室内でのインタラクションの研究を深めるには、「教師自身の経験や信条を見つめ直すことが必要」と森(2003)では述べられています。私自身、教師よりも「子どもが話す」のが大事、そして「英会話のダイアローグを覚えてほしい」という気持ちから決まったダイアローグばかり話し、OK! Good! Next! などと、単語で細切れに話していた時期もあります。逆にティーチャートークが大事だから、と、ただぺらぺらと話していた時期もあります。理解可能で、かつ意味のあるインプットを与え続けることが、言語の習得につながると言われています。また、Rost (2002) では、学習者にとって意味のあるインプットの中身は変化するものだと述べられています。子どもたちにとって意味のあること、子どもたちの表情や発話をキャッチし、子どもたちの理解度を把握し、探り、よりわかる喜びを与えられるティーチャートークを通して子どもと関われるよう努力し続けていきたいものです。

References
Cadorath, J & Harris, S. (1998). Unplanned classroom language and teacher training. ELT Journal, 52, 188-196
Cervantes, R. & Gainer, G. (1992). The effects of syntactic simplification and repetition on listening comprehension. TESOL Quarterly, 24, 767-770.
Garton, S. (2002). Learner initiative in the language classroom. ELT Journal, 56, 47 - 56.
Lynch, A.J. (1988). Speaking up or talking down: Foreign learners' reactions to teacher talk. ELT Journal, 42, 109-116.
Mori, R. (2003). Respect for students: An alternative paradigm for classroom interaction research. FPU Journal of Nursing Research, 1, 3-13.
Rost, M. (2002). Teaching and research in listening. Harlow: Longman.
Slattery, M., & Willis, J. (2001). English for primary teachers: A handbook of activities and classroom language. Oxford: Oxford University Press
Supp Cabrera, M. P. & Martinez, P. B. (2001). The effects of repetition, comprehension checks, and gestures, on primary school children in an EFL situation. ELT Journal, 55, 181-188.
Takahashi, A (2005). A study of teacher talk and its modification in a Japanese elementary school classroom. Teachers College, Columbia University M.A. Project
Willis, J (2002). Teacher talk in the primary school. The Language Teacher

 

清野 明子
English Land共著者。小学校、中学校などで幅広く英語教育に携わった経験を持つ。現在は長野県松本市で自ら教室を主宰。