pearson
alwayslearning

Pearson Longman Kids E-Link

アカデミックアーティクル

子どもの年齢がいくつであろうと、保護者とのコミュニケーションは教室での学習を成功へと導く大切な要素です。保護者とのコミュニケーション不足は、子どもが教室を退会する際の根本的な要因のひとつでもあるのです。ですから私たち教師は、保護者とのコミュニケーションの築き方についても目を向けるべきでしょう。

コミュニケーションに関してまず考えなければならない第一の要因は、『コミュニケーションは双方向から成るもの』― もっとも基本的なことです。当然と言われればそれまでですが、私たち教師が指すコミュニケーションとは、教師の側から情報を発信し、それについて意見をいうかどうかは保護者の責任、という形ではないでしょうか。ここで言うコミュニケーションは違います。コミュニケーションを図る上では教師の視点ももちろん重要ですが、保護者の視点から見ることもまた同様に重要なのです。多くの保護者はたいていの場合、教師と「共有」することに自らブレーキをかけ、どちらかというと話す側よりも聞く側にまわる傾向にあります。したがって私たち教師から、保護者からのコミュニケーションを促すような手段やシステムを提供する必要があるのです。

まず最初に教師、または教室側から保護者へのコミュニケーションを図る方法として実践的なものをふたつ紹介します。ひとつは保護者と直接話す方法、もうひとつは書面で伝える方法です。以下に詳しく述べます。

  1. 保護者と直接話す。これにはふたつ方法があります。

    ひとつめは、対面で話す、という方法です。未就学児を預かる側の利点として、保護者の多くが待合室で授業が終わるのを待っていたり、あるいは送迎のため教室周辺に残っていたりしますね。子どもが小学校にあがるとこれは徐々に変わってしまいます。

    ふたつめは、電話で話す、という方法です。これは教師が空き時間にできることです。ただし保護者も都合がよいとは限らないのが難点です。電話で話す際には、具体的に述べるよう心がけましょう。例えば「今日○○ちゃん、良くできましたよ」と言うだけでは「よい授業だった」ということ以外に伝わる内容がありません。「○○ちゃん、単語を全部思い出すことができましたよ」など具体的に言うことでより明確に、また確かな基準とともに保護者に理解してもらえるでしょう。

  2. 書面で伝える
    保護者と直接話せない場合、もしくは伝える情報を保護者に覚えていてほしい場合には、文書で伝える方がよいでしょう。これはよく使われる方法ではありますが、回答用紙などがついていない場合は完全に一方通行となります。紙に頼らず、Eメールを使うのもよいでしょう。ただし、メールを送る前に送信可否を保護者に確認する必要があります。

授業での様子を伝えることは、保護者に対して「あなたのお子さんをちゃんと見ていますよ」という教師側の意思表示になります。授業を行う上で必要な子どもの情報、例えば子どもの得意な学習方法(音楽的なのか、論理的なのか、あるいは視覚に頼るのか、など)、子どもの性格(恥ずかしがり、活発、など)といったことを教師が把握している、と伝えることで、保護者に対して「あなたの子どもをちゃんと見たうえで理解していますよ」と伝わります。すると保護者は、教師を「教師」として見るのではなく「自分の子どもに、そして自分たちにとってつながりのある人」と認識を変えていきます。そして教師側からの提案や、子どもの教室での様子などに対してより聞く耳を持つようになるのです。英語教室ではまれですが、私が実際に行ったなかで一番有益だったのは保護者会です。多くの教室にとって実用的な選択肢ではないかもしれませんが、可能であれば年間スケジュールに組み込んでみるのもよいでしょう。ただし、保護者全員の出席を期待するのは現実的とは言えません。全員出席しないから、といって失望することはありません。

保護者は様々な理由から、教室や教師と話すことをためらう傾向にあります。なぜためらうのか、ということを追求する前に、「保護者は話すのをためらうものだ」ということ、そして話せる機会を設けていないにも関わらず保護者が教師や教室に対して相談をもちかけることはありえない、ということをまず教師が認識しなければならないでしょう。だからこそ私たちは、教師や教室に対して保護者が率直に話せる土台を作る必要があるのです。ではどのようにしたらよいのでしょうか。

  1. 保護者と最初の関わりをもつ
    体験レッスンなどで保護者が来校し、入会を決めた時というのが今後良い関係を築いていく最初の一歩になります。学校のシステムや教材、授業の時間など様々な情報を保護者に伝えるタイミングでもありますが、土台を築いていくにはこの瞬間から始めることが大切です。保護者から子どもの教育に対する現状や希望、要望など様々な情報を得るよう心がけましょう。このような内容を保護者と話すにはそれなりの時間がかかりますから、それも考慮に入れておきましょう。
  2. 良好な関係を築く
    特に子どもが入会してから最初の3~5週間ほどは保護者も、自分の子どもが教室でうまくやっているか、ということに心を砕きます。授業を見てもらったり、保護者が不安に思っていることを率直に話してもらい、きちんと応対しましょう。もしそのような時間がない場合、電話で話すとよいでしょう。話す際は、保護者が疑問に思っていることを聞ける雰囲気を作りましょう。1度だけではなく、良好な関係が形作られるまで続けます。そうするためにはTIPS(teachers involve parents in school work)も有効です。TIPSのコンセプトには様々な利点がありますが、教える上でも活用できる、というのが最大の利点でしょう。例えば教室で行ったアクティビティを、復習をかねて家庭でもう一度、クラスメイトとやる代わりに保護者とやってもらうのです。未就学児対象クラスでテキストを使わない場合、授業の終わりに5分ほど、保護者にどのようなアクティビティをしたか説明し、家庭で再度やってもらうよう頼みましょう。これは教師の負担を減らすばかりでなく、翌週、保護者からフィードバック(簡単に記入できる用紙を渡しても、口頭で伝えてもらっても構いません)をもらうきっかけにもなります。今後継続して保護者と良好な関係を築いていくのにとても役立ちます。
  3. 良好な関係を維持する
    毎回の授業と同様、これは常に行われるべきものです。未就学児を持つ保護者は、1対1、もしくはグループでの面談に慣れています。常に授業をしている教師にとって、1対1での面談を設定するのは難しいですが、グループであれば参観日の後などに設定できるでしょう。教えている状況、また教師の日本語力にもよりますが、学校のスタッフに面談をリードしてもらう、面談に合わせて代講教師を手配する、などを考えておく必要があるでしょう。どちらも不可能な場合、参観日の授業時間は短縮し、代わりに面談時間を設ける、参観日期間中は通常と異なる時間割を組む、なども選択肢として考えられます。ここでもTIPSが役立ちますよ。
  4. 良好な関係を強化する
    保護者である、ということは、他のどんな仕事と比べても大変なことです。教えていない時間に教師と関わりを持ってもらうのと同時に、保護者同士でもまた集まる機会を設けてあげるのもよいでしょう。教えている状況にもよりますが、例えば保護者のためのクリスマスパーティを催したり、カラオケに行ったり、保護者のための「スペシャル・クラス」を設けたり、学校の行事に保護者も参加してもらうのもよいでしょう。もちろん他にもいろいろできることがありますが、全てみなさんの教えている環境によってできることとできないことがあるでしょう。

どのような方法をとるにせよ、全て教えている状況を考慮した上でみなさんが決めてください。大切なことは、授業を成功へと導くには保護者の協力が不可欠である、ということです。つまり、保護者との良好な関係を築き、それを維持していく必要があるのです。容易にできることではないですし、常に注意を払う必要がありますし、さらに計画、成功へと導く戦略、変化に合わせた修正、そして柔軟性も必要です。しかし全てがうまくいった時、費やした時間と努力にはそれだけの価値があった、と思えることでしょう。Good luck!

参考文献

Cromer, James P.M.D  Schools that Develop Children  The American Prospect Vol 12 no 7. April 23, 2001.
Cromwell, S. The Homework Dilemma; How much should parents Get Involved?  Education World 1998
Delisio, E.R.  Planning for Parent Involvement  Education World 2005
Diffily, Deborah  Teachers and Families Working Together  Pearson Allyn and Bacon 2004
Lovell, K  Educational Psychology and Children  University of London Ltd 1973
National Network of Partnership Schools.  John Hopkins University. 1996-2006.  (TIPS)
  Accessed on:  http://www.csos.jhu.edu/p2000/tips/index.htm
Olsen, B & Fuller, M. Home-School Relations Working Successfully with Parents and Families  Allyn and Bacon 2003
Poole, B.J. EDUCATION FOR AN INFORMATION AGE  Teaching in the Computerized  Classroom, 5th  Copyright 2004, William C Brown  Pub.
School Development Program  Yale Child Study Center
  Accessed from /info.med.yale.edu/comer/about/parent.html
Senge, P et al.  Schools that Learn (A Fifth Discipline Fieldbook for Educatior, Parents, and Everyone who cares about Education)  Currency Doubleday 2000

 

佐藤ケイト

1989年よりヨーロッパ、アメリカ、日本などで英語教育に携わる。17年前に来日、2003年よりキトピア英語学校(札幌)を主宰。自ら幼児・児童英語教育に携わる傍ら、ピアソン・ロングマン アカデミックコンサルタントとして児童英語教育関連の寄稿をはじめ、国内外でセミナーを行う。キンダーミュージック認定講師。ETJ、JALT TC-SIGなどの北海道地区コーディネーター、ケンブリッジ国際児童英語検定の口頭試験官も務める。